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アジアBLドラマの感想など

Peach Of Time 感想/ネタバレあり

Peach Of Timeは、タイBLドラマ「WHYRU?」に出演したJimmyとTommyが渡韓して韓国BL作品に出演するという、これまであまりなかった形態でのドラマです。全10話がWeTVで配信(日本語字幕はありません)。2021年10月の現時点、日本からの視聴はVPNが必要となります。このあと映画版もあるらしいとのことですが、自動翻訳で全10話見た個人的感想です。※以下最終話までのネタバレもあります。

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タイからやってきたピーチ(Jimmy)と、ピーチの友達で事故で亡くなって霊となったユンオー(jaehyun)のお話がメインではあるものの、ユンオーの母親が亡き息子に対して抱える自責の念や仕事でのトラブル、ユンオーの事故の真相、またユンオーが祖母から相続し母子が住まいとしているリゾートに棲みつく霊であるマリオ(Tommy)が手離せない過去など、さまざまな人の人生が絡み合うストーリーでした。それぞれが大切な誰かを喪う悲しさ・取り返せない過去と向き合うための奇跡を描いたドラマです。

 

これまで何作か見てきた韓国BLの傾向として『設定が凝ってて2人が惹かれ合う様子が感情の揺れ含め綿密にしっかり描かれる』印象がありまして、今回も「BL」と銘打たれてるからにはそのトーンなのかな…と思っていました。ですがPeach Of Timeはその要素も保ったまま、加えて主人公2人と併走する登場人物の人生もしっかり描いているのが印象的。

 

大切に思っているけど素直に気持ちを伝えられないまま、相手が、或いは自分が逝ってしまったらどんなに辛いか。何があるか分からないからこそ、生きる一瞬一瞬を、自分を、隣にいる人を大切に…という、よくあるテーマではありますが、ピーチとユンオー、マリオの過去、ユンオーの母、その母の仕事先のトラブルや、ユンオーの事故の真相などなど、全てがリンクしていくストーリー展開と回収はお見事でした。特にユンオーとユンオー母の関係、わだかまりを抱えたまま子供を喪う母の心情には感情移入してしまって心にくるものがあり、毎話泣いてました…。


ただ、これだけ盛り沢山な要素を約30分程度の10話でまとめ、BLという前提として観るには、ピーチとユンオーのストーリーが少し物足りないものになってるかな、と感じました。(でもこれはメインビジュアルなどがピーチとユンオーの2人の物が多かったのもあって私が勝手にそこの関係を期待した分の反動かもしれません。)

 

それとは別に、もう少しユンオーのキャラクターをしっかり描いて欲しいな…と思ってしまった面もありました。ピーチが奔走し、周囲が各々の過去と向き合う中、ユンオーも自分と母親の関係や、生前にやり残したこと、あるいはピーチとの関係に思い悩むのですが、行動がピーチ主導でメリハリがあまりないが故に印象が薄い。後半は笑顔も増え、嫉妬などの感情の振れ幅も増えますが「もっと!もっとユンオーのことが知りたいんや!!!」と思ってしまった感はあります。

また、ユンオーのキャラクターの印象が薄いのとは逆に、行動もキャラクターもハッキリとしていて終盤まで感情の揺れ動きなど細かく描いてきたマリオの行く末が、結局ふわっとしたままなのも気になりました。この辺りは映画編で補足されるのかもしれませんが…。

 

ピーチとユンオーの話が中心ではあるものの、そもそもタイトルが「Peach Of Time」なわけだし、ピーチとが関わりあった全員がなんらかの形で前進していく点からも、これは私が視聴前に想定していた「ピーチとユンオーの2人愛の物語」というよりは「ピーチという存在がもたらす愛の物話」なんじゃないかな…とも思います。

最終話、願いを込めたブレスレットが切れて落ちるところで先の可能性を残してはいますが、私個人はそこで視聴者に結末を委ねてるのかな、とも感じました。

 

※続編があるのなら、ピーチがユンオーとマリオとともに彷徨える霊の謎を解明していくファンタジー探偵物が見たいです。

 

ちなみになんで名前が「ピーチ(桃)」なんだろうな、と思ってたんですけど、日本でもそうですが韓国でも「桃」には幽霊や鬼を祓う力がある(桃は陽の気だから陰の気である霊に近づけない/生の象徴)という考え方があるようですね。だったらピーチは霊であるユンオーやマリオを祓っちゃうんじゃ?と思いつつ、死と生の境目を迷い生きるユンオーたちを死へと送り出す意味で、生の象徴でもある桃を名前にしたのかなあと想像しました。死をさまよった経験のあるスジンさんはマリオの存在を認識出来るようですし、ユンオーの母も最終的に息子の頬に触れたりもしますが、最初から何もせずにマリオやユンオーを視認することが出来、触れられるのはピーチだけなんですよね。損得を考えない行動とか「あいつは天使か」というセリフなんかもありましまけど、そういう特別な存在なのかもしれないなと思いました。


Mii2Shipperとしての感想は、2人もインタビューで言ってましたが、韓国俳優さんたちは軒並み安定して演技スキルが高く、言語も違う中、ほんとによく演じたなあと思います。韓国に入国時に2週間の隔離生活をして、夜中まで撮影に励んで1ヶ月、さらに出国時にも2週間の隔離生活をして…というかなりハードな仕事だったと思います。俳優としての経験を重ねてるTommyも相当苦労し努力したと思いますが、WHYRUがドラマデビュー作だったJimmyが、しかも主役として演じるのは想像を超えた大変さだろうなと。インタビューなどで窺い知る限りですが、己のことでいっぱいいっぱいになりつつ、2人で支え合って頑張ったんだな〜としみじみしました。この経験を経て、今後の2人の仕事がとても楽しみです。いまTommyがvlogで韓国での生活をまとめてくれてるので(EP1が公開されてます!)そちらも楽しみです。